未来終活
ワクワクする後半生の設計図を描こう
映画に学ぶ終活

「蜜蜂と遠雷」

2019年日本 原作 恩田陸 直木賞&本屋大賞受賞作品 監督 石川慶 主演 松岡茉優

あらすじ

日本での国際コンクールを舞台に世界へのデビューを狙う亜夜、明石、まさる、塵という若き四人のピアニストたちの挑戦、才能、運命がテーマである。四人の天才ピアニストたちが互いに影響を及ぼしあい、お互いの相乗効果によって短い期間に成長を遂げていく様を描く。

感想

行間から音楽が聞こえるとまでいわれた原作者の恩田陸氏は「そもそもこの小説は絶対に小説でなければできないことをやろうとして書き始めたものであり、映画化の話が出たときはなんという無謀な人たちだろうと内心あきれていた」と述べたという。それほどまでに映画化は困難と言われたものを見事に映像化した石川慶監督はまだこれが長編二作目だというのが驚きだ。音楽を少しでも齧った人ならば、その音楽性の高さに瞠目するだろう。それにしても役者さんという人たちは昔からピアノを弾いていた人ではなくてもどうしてこんなに見事にピアニストになれるのだろう。もちろん演奏自体は吹替であることは承知の上だが、コンクールでのピアノ演奏の場面はもはや演技には見えない。中でも松岡茉優の最後の演奏場面での動きと表情は秀逸。天才子供ピアニストと呼ばれた亜夜が母を亡くした七年前から止まってしまったピアノ人生を、このコンクールを機に一気に喪われていた時間と共に取り戻していく。そんな一種のグリーフケアの物語ともいえる。