2012年 日本 WOWOWシナリオ大賞 監督 石井裕也 主演 中村獅童
あらすじ
売れない映画監督の橋本雄司は高校時代の親友 尾崎明夫から手紙を受け取り20年ぶりに帰郷する。入院中の明夫は自分の書いた脚本を映画にして欲しいと雄二に頼む。明夫の妻麻由美に反対されながらも、雄司は映画を作ることを決意する。その映画は余命少ない明夫が自分をヒーローに仕立て上げ、自分の死後、息子の健太郎に残したいと願う架空の英雄伝説だった。
感想
「もし人生が一本の映画だとしたら、俺のエンドロールには何人くらいの人が載るんだろう」という明夫のセリフが胸に刺さる。自分の人生で出逢った人たち、自分の人生に影響を与えたひとたち、自分の人生に関わった人たち、それは人生の終末期に誰もが想い巡らすことに違いない。もし、麻由美が明夫とではなく雄司と結婚していたなら、明夫は雄司の代わりに東京へ行き志望していた脚本家になっていたかも知れない。そして雄司は映画監督を諦めて麻由美とともに故郷に留まって家業の用品店を継ぎ、麻由美は婚家の家業を継いで理髪師になることもなかっただろう、などと明夫の口から語られる人生If話はイタい。ともあれ、誰もが承知の上でのでっち上げの英雄伝説映画は何とか完成した。街中の多くの人々が参列した七回忌での上映会のエンドロールには撮影に協力してくれたエキストラの名前が延々と続き拍手喝采を浴びた。明夫は映画の中に確かに生きた証と人との繋がりを残せたのだと思う。