未来終活
ワクワクする後半生の設計図を描こう
映画に学ぶ終活

「あん」

2015年日本 原作 明川哲也 監督 河瀬 直美 主演 永瀬正敏

あらすじ

どら春の雇われ店長として無気力に暮らしていた中年男 千太郎の店にある日ひとりの老女が訊ねてきて働かせて欲しいと言う。はじめは断ったものの、再度老女が持参した粒あんを食べて千太郎は気が変わる。徳江の作る粒あんで作ったドラ焼きは評判となり店は大繁盛する。しかし徳江がライ患者であったという噂が拡がり、店には再び閑古鳥が鳴き、徳江は静かに身を引いていく。空虚感を抱えた専太郎は店の常連客 中学生ワカナの提案で共に徳江を施設に訪ねる。

感想

ハンセン氏病に対する社会の偏見とそれによって自由と人生を奪われてきた人々の姿を少しづつ垣間見せ、最後は人生の先輩として生きる意味を千太郎に語る徳江の遺言をエピローグとする演出は「もがりの森」でカンヌ国際映画祭グランプリを獲得した河瀬直美監督。桜の花や風にそよぐ樹々に無言のまま心象風景を語らせる手腕は健在で、淡々とした日常を描く中に真実味を与える手腕はさすがである。

「ねえ、店長さん、私たちはこの世を見るために、聞くために、生まれてきたのだとすれば、なにかになれなくても、私たちには生きる意味があるのよ」

ハンセン氏病の施設に半世紀にわたり閉じ込められてきた老女を演じる樹木希林さんの演技に圧倒される。この人のは果たして演技なのだろうか?地のままでいってるのだろうか?といつも不思議に思う。