未来終活
ワクワクする後半生の設計図を描こう
映画に学ぶ終活

「男はつらいよ お帰り寅さん」

2019年松竹 監督 山田洋二 主演 吉岡秀隆

あらすじ

柴又帝釈天の参道にあった団子屋「くるまや」はカフェに生まれ変わり、裏の住居にはすでにおいちゃんおばちゃんの姿はなく、今ではさくらとその亭主が住んでいる。

ある日さくら夫婦の一粒種である満男の妻の七回忌の法要が営まれ、昔話に花を咲かせる。満男は高校生の娘と共に近くのマンションに暮らしていて、サラリーマンから小説家に転身していた。

その満男の最新作のサイン会に初恋の人イズミが来たことに満男は驚き、イズミに会わせたい人がいると小さなジャズ喫茶に連れていく。そこにいたのは寅次郎の恋人だったリリーだった。

感想

映画の中で寅さんは、巧みに仕組まれた脚本によって満男の回想として度々登場する。可笑しくも懐かしい名場面の中で寅さんは生き生きと輝いていた。

まだ「終活」という言葉すらなかった頃、山田洋次監督はいつか寅さんの老後を描きたいと言っていた。しかし結局、年老いた寅さんは登場しない。ただ今もどこかを元気で旅をしているらしいと窺わせるだけだ。
鑑賞後に残った想いは正直言って切なさだった。生まれた時から見てきた幼かった満男が既に立派な中年になっていることに軽くショックを受け、寅さんの活躍した輝かしい季節が、私たちにとっても古き良き時代になったことを思い知らされたからだ。

結局寅さんの老後は描かれなかった。それはある意味救いだった。寅さんはいつまでも自由気ままの象徴であり、私たちの夢であり続けて欲しい。

しかし山田洋次監督の撮った「男はつらいよ」完結編は、寅さんではなく監督自身にとっての終活だったのではないかと私は思う。