2007年日本 原作 美嘉 「恋空~切ナイ恋物語」 監督 今井夏木 主演 三浦春馬 新垣結衣
あらすじ
平凡な高校一年生の美嘉はある日偶然、廊下で金髪ツンツンの不良学生ヒロとぶつかり、初めてお互いの存在を胸に刻む。その後美嘉の落とした携帯をヒロが拾い、そっと図書室に置いて返してくれたが、美嘉の電話番号を入手したヒロは夏休み中ずっと名乗りもせずに美嘉に電話をかけ続ける。辟易しながらもそんなヒロからの電話を次第に楽しみにしている美嘉。
夏休みが終わって初めて会う約束をした日、現れたヒロを見て驚く美嘉。こんな人あり得ない!と思ったもののヒロの直情的な愛情表現に魅せられ二人の交際が始まる。幸せすぎる毎日だったがヒロの元カノからの復讐に深く傷つき、やがて妊娠した子を二人で育てる決意をし、親にも認めて貰ったものの、直後に流産するという悲劇が続く。それでもヒロを想う美嘉の気持ちは変わらなかったのに、なぜかある日ヒロから一方的に別れを告げられる。ヒロが急に冷たくなった理由もわからない美嘉の戸惑いと絶望。しかし二人の赤ちゃんの命日、毎年一緒にお参りしようねと誓ったクリスマスイブには、想い出の遊園地の花壇に必ず子供用のミトンを供えに通うヒロ。美嘉にはヒロの真意が掴めぬままやがて東京の大学に進学し新しい恋人との日々に埋もれていく。
感想
2005年に携帯小説として『魔法のiランド』に連載されて半年間一位を続けたという美嘉さんの実体験に基づく小説を、今井夏木監督が女性ならではの感性で演出。前半は見ていて胸キュンする甘い青春映画である。しかし後半からは様相が一変し、病魔に襲われたヒロの終活映画となる。美嘉の為を想って一日も早く自分のことを忘れさせようと悪ぶるヒロ。冷たくされる理由もわからず苦しむ美嘉とのすれ違う心が切ない。青春の真っただ中で何度も死と向き合う二人。若さゆえの選択の過ち、若さゆえの愛情の表現、しかし最期の時には愛する二人の心は固く結ばれていたという救い。
最後の場面でヒロに置いて行かれた美嘉が絶望のあまり川に飛び込もうとした瞬間、橋の下から美嘉を押し戻すように舞い上がってきた二羽の白鳩は、亡くなったヒロと赤ん坊だったのではないか・・・三浦春馬君の追悼としてこの映画を選びました。彼をこの世に留めてくれるものがなかったことが残念でなりません。素敵な俳優さんでした。