数年前にテレビのワイドショーで騒がれた件です。
宇津井健さんと内縁関係の奥様が、彼の臨終の前日に婚姻届けを出したという話題を覚えていますか?
それまで彼の遺産は一切要らないと言っていたのに、亡くなる直前に婚姻届けを出したのは明らかに相続狙いだ!と前妻との間に生まれた長男に無効を訴えられた事件です。
それは宇津井健氏の残した田園調布の豪邸に長男が住んでいたからで、もし遺産が半分妻となった後妻に取られるとなると、その家を手放さなければならないからです。
個人的な見解を言えば、後妻となったその人は、その前に十数年という実質的な婚姻関係にあったのですから、当然と言えば当然の権利なのですが、問題は宇津井健氏が、意識のしっかりしている時にその婚姻届けに署名捺印していたかというところでしょう。
同様のことは遺言書の場合でも起こります。
遺言書はご存じの通り、何度でも書き換えられ、最新の日付のものが有効となります。
それは生きていくうちに人間関係が変化したり、心情に変化が出てきて、当初とは違った内容に作り変えるからですが、中にはこんな実例があって驚くこともあります。
友人の母親が亡くなった時、残された遺言書は信託銀行が管理していたのですが、それは以前からあったものではなく臨終の二週間ほど前に、同居していた娘が公証人を枕元に呼び、他の兄弟のいないところで作り直したものと判明しました。
怪しかったのは書き換えを指示した娘に遺産がより多く入るように作り直していたこと。
その時作成された遺言書の証人二名が遺言執行人に指定されていた信託銀行の人間であったこと。
果たしてその時、お母さま本人に清明な意識があったのかどうか?
また本人に遺言書を作りなおす意思があったのかどうか?
死人に口なしですから真相はわかりません。しかしこの後、相続で大いに揉めたのは言うまでもありません。