未来終活
ワクワクする後半生の設計図を描こう
未来終活エッセイ

認知症の脳の不思議2

有料老人ホームに入った母は三食昼寝付きで認知症はますます進み、先日は私のことを「誰だかわかる?」と聞いたところ「妹でしよ」と言われてしまいました。
きっと母にとっては私はまだ10代か20代の娘盛りで、今のアラ還の姿など想像の外なのでしょう。他人と思われなかっただけ良しとしましょう。

そこで一計を案じ、前から疑問に思っていたことを尋ねてみました。
「昔、幼稚園の運動会を豊島園でやったよね?あのときは電車で行ったのかしら?」
大井町から国鉄(JR)に乗り、品川でやまて(山の手)線に乗り換えて、さらに池袋で西武鉄道としま線に乗り換えていくのは今でさえ面倒で、どうみても子供には遠過ぎる道のりです。
母はしばらくじっと考えてから「きっと幼稚園から観光バスで行ったと思うわ」と答えたのです。

今朝のご飯のことは忘れても昔のことは忘れない、というのはどうやら本当です。短期記憶はなくても母にとっては楽しかった記憶、懐かしい記憶は今でもちゃんと心に残っているのです。

認知症の人とはまともに話が出来ないのではなく、共通の記憶があれば、ちゃんと会話が成立すると確信した出来ごとでした。