未来終活
ワクワクする後半生の設計図を描こう
未来終活エッセイ

認知症の脳の不思議

認知症になった母の人生の幸福度を知りたくて、こんな質問をしました。
「お母さん、お金には苦労しなかった?」「そうね、あまり困ったことはないわね」
「美味しいもの、たくさん食べた?」「そうね、美味しいものを食べてきたわね」
「お母さん、子供たちには恵まれた?」「そうね、恵まれたわね」

母は昔から「人の晩年の幸福は子供次第で決まるのよ」と言っていたので、母に苦労を掛けた覚えのある私は、三つ目の答を聞いてようやく安堵したのでした。

しかし不思議ですよね。。さっき食べたものはもう忘れているのに、今までの人生を振り返るという高度な作業は出来るということ。
そういえば亡くなった義母も、6ヶ所の病院や老健を転々とした挙げ句、ようやく終の棲家として特養に落ち着いた頃「お義母さん、ここの居心地はどう?」と問うと「うん、いいよ。今が一番幸せ」と穏やかな顔で答えてくれました。

今朝の献立や食べたことすら忘れても、幸せという抽象的な概念にはきちんと向き合える。呆けているのに好き嫌いははっきりしている。認知症の脳の不思議なからくりに改めて思いを馳せた出来事でした。