2018年日本 原作 東野圭吾 監督 堤幸彦 主演 篠原涼子 日本アカデミー賞最優秀女優賞
あらすじ
東野圭吾の同名小説を「明日の記憶」の堤幸彦監督が映画化。水の事故で脳死状態の娘を前に究極の選択を迫られた夫婦の苦悩と葛藤を描く。一度は脳死を受け入れようとしたものの、一瞬呼びかけに反応したように見せた娘の臓器提供を取りやめ、まるで眠り続けているかのような娘を自宅に連れ帰り甲斐甲斐しく面倒を見る母親。自分の会社の生体補助技術を生かして筋反射を起こし娘の身体を動かそうとする父親と技術者。かすかな回復への希望に一喜一憂するうちやがて家族の間にきしみが生じ、運命の歯車を狂わせる。
感想
脳死を受け入れるかどうかという究極のテーマが重い。心臓が止まっていれば死亡だが、心臓が動いていても脳波がない場合には二度の脳死判定の結果を待って死の認定が為されるという現行制度の曖昧さが悲劇を呼ぶ一因だと思う。まるで生きているかのような身体の温もりがあれば、決して死んだとは思えない。筋肉反射で口角を上げるとまるで本当に笑っているように見えてしまう。そんな母親の歪んだ希望的感情を実生活でも二児の母となった篠原涼子が見事に演じ切る。最後に眠っていた娘が目をぱっちりと見開き、ベッドに起き上って「お母さん、今までありがとう。私はとても幸せだったよ」と言ったことで母親は娘が最期のお別れに来たと悟り、そこで夢から目覚める場面は辛い。脳死判定、そして臓器提供の是非。それが自分の身近で起こることの可能性は誰にも否定できない。