未来終活
ワクワクする後半生の設計図を描こう
旅行記

エジプト紀行 五日目中編

ホルス神殿から戻った私たちを乗せた船はルクソールに向けて出航する。お天気で気温が上がってきたデッキのプールでは泳いでいるツアーメイトもいる。デッキで気持ちよく日光浴などしている間に船はエスナの街に近づく。

エスナには喫水線を調整する水門が2箇所ある。
船の最先端で見学しようとデッキを下に降りると副船長から声を掛けられ、怒られるかと思いきや、操縦席に招き入れられ、船長と写真を撮ってくれたりチャイを淹れてくれたりの大サービス。恐る恐るお代は?と訊くと要らないよ、とのこと。初めて経験する無料サービス。

船長室で見たキャプテンは、ガラベイヤを着て高い座席のうえに胡坐をかいて操縦していた。世界広しといえども、こういう操舵姿勢は珍しいと思う。

そうこうしているうちに、水門に達し、水の増減や門の開閉の様子を最前列にツアーメートと鈴なりになって観察する。ナイル川の水門は国内で見たそれよりもやはりスケールが大きい。

その日、船上で一番びっくりしたのは、水上からやってくる物売りたち。船の右舷と左舷に垂れているロープに係留し、小舟で船に近づいてきてはバスタオルやガラベイヤやスカーフを広げてみせる。まだ買うとも言わないうちから、品物をビニール袋に入れて船上デッキに投げ入れて寄越す。

気に入らなくて、または不要なので投げ返そうとしてもすかさず”NO!”と叫び”WHY?”と訊く。商品が決まっても決まらなくても値段交渉に入る。

交渉が成立すれば、ビニール袋にお金を入れて投げ返す。こちらのコントロールが悪くて、川面にドボンしたらどうするつもりか。ツアーメイトが無事5USドルで交渉成立し、買い上げたバスタオルの品質は悪くなかった。

こちらでのこの値段交渉にはほとほと疲れる。

先方は初めから吹っ掛けるだけ吹っ掛け、こちらは値切れるだけ値切って妥協点を探る。先方が応じなければ、それは要らない!というポリシーを貫かねば負ける。だから同じ品でも店によって価格は3倍以上違うこともある。

そのせいか、アラブ諸国では100円ショップのような値段の均一なショップが大盛況と聞く。御婦人たちも値段がきちんとわかる化粧品を安心して買えるからだという。現地の人たちでさえ買い物の度の値段交渉には疲れるらしい。