未来終活
ワクワクする後半生の設計図を描こう
映画に学ぶ終活

「レイニーのままで 消えゆく記憶」

2017年 アメリカ 監督 アルバート・アラール 主演 クリスタル・チャペル ジェシカ・レシア


あらすじ


大人気のテレビドラマシリーズで主役だったレイニー・アレンはエミー賞の最優秀女優賞を獲得するという俳優としてはこれ以上ない栄光を手にしていた。彼女のパートナーは長年にわたり公私ともに支えてきてくれたエヴァ。しかしエヴァにはレイニーが尋常でなくなってきていることに気が付いていた。ふたりで海辺の近くに家を借りて引っ越してきたのも、レイニーの症状を心配してゆっくり静養させようと思ったからだ。しかし、レイニーの物忘れの症状はさらに度合いを増していく。ふたりで訪れた心療内科での診断は若年性アルツハイマー。レイニーはそれが遺伝であることを自分ですでに知っていた。エヴァはレイニーに、レイニーはエヴァに対して腹を立てて衝突を繰り返しながらも、残された時間、お互いのために何が出来るかを真剣に模索していく。


感想


最初に若年性認知症を扱った韓国映画「私の頭の中の消しゴム」で衝撃を受けたことを思い出す。先日の邦画 渡辺謙主演の「明日の記憶」も同様だが、若年性認知症は老人性に比べて身体が丈夫なだけに悲劇性が際立つし、周囲も若いだけに戸惑いも大きい。この映画は同時にパートナーの設定が同性であるために、海外のLGBTの映画祭で多くの賞を獲得したと聞く。同性婚の認められていない日本でも、今後はこうした同性カップル同志の認知症介護や老々介護、特に遺産相続では大きな課題が出てくると予想される。


さてこの作品についての感想だが、エミー賞といえば「ゲームオブスローンズ」や「ホワイトハウス」とかそうそうたるドラマシリーズに与えられる賞だから、ヒロインはさぞ大女優だろうと思われ、しかしあまり美人ではないのでリアリティに欠ける為、認知症という悲劇との落差が出ないのが残念。しかし、施設に入ったヒロインはたとえ認知症が進みパートナーが訪ねて来ても誰だかわからない、という状態でもつくづくとエヴァの顔を見ては「あなたは美しい」と呟き「でも、私にはパートナーがいるから・・」と本人の前で自分を牽制する描き方はうまい。

「残された時間には意味がある」「生きる価値のない日はない」など、この映画ならではの名セリフが心に響く。日本では公開されなかった地味な秀作。